ピンクの涙|その5

手術が終わり病室へもどると、もの凄い喉が乾いていました。術後の食事制限はなにもなかったので、すぐさま冷たいコーヒーをごくごくと飲み干しました。手術が終わったという安堵で体の力が抜けてしまいました。

 

ここから下向きな闘病生活の始まりです。手術台に横たわっていただけですが、力が入っていたんでしょうね、相当に体力を消耗しています。ベットを横切っているテーブルにタオルを重ねて頭を置いて下を見ていると、奥さんに「サンドウィッチ食べる?!」と声を掛けられました。

ぱくついていると執刀医の先生が手術結果の報告に来られました。「手術は無事終わりましたよ、癒着していた部分も綺麗にクリーニングしましたから問題ないでしょう。後は下向きがんばってください。」クリーニングにかなりの時間を掛けていたのは記憶にありましたので、言葉通り丁寧な手術だったと思います。

その後看護師さんがこられ、点滴を外してくれました。サンドウィッチ補給後いよいよ下向き生活です。胸に当てる枕(将棋の駒みたいに片方が薄い)が用意されうつ伏せに、1時間くらいは安静にと言うことでした。うつ伏せ以外は、トイレと診察時診察室までの歩行が許可されています。歩くときも下向きですけどね。

術後の予定表が来ました。術後二日目から眼にパッチを張ってのシャンプーが可能です。入浴は首下までなら可能です。三日間は眼帯で4日目から就寝時のみ眼帯。6日めからは全てがフリーになります。

問題は目の中のガス、手術直後は目の上ぎりぎりのところにラインが見えました。頭を振るとそのラインが波打ちます、ここがガスと硝子体の境目みたいです。目薬を点すときに眼帯が外されますから、その時だけ瞳からの映像を確認できます。

ガスの部分は、虫眼鏡のように像が拡大されて見えます。しかもピントは全く合いません。目の前の物がなんなのか認識するのも難しい感じです。手のひらを目の前に広げて見ますが、手だと言うのも判らない感じです。

3日目くらいに7分目くらいまでガスのラインが落ちてきました、ガスの上の部分は若干像が見えるようになってきましが、内部に気化したガスが充満しているのと、ガスに当たった光が内反射して、まともに見える部分に光のゴーストがゆらゆらします。

この状態が続き、日にちがたつにつれガスのラインが少しずつ下がっていきます。半分を過ぎた頃より、ドラえもんの手のように見えていた手が、やっと指を認識できるようになりました。

毎日担当医の診察を受けました、この担当医なんともゆったりとした雰囲気で話し方もおっとりとした感じです。診察時も顕微鏡を覗きながら「はい、うえ〜、みぎうえ〜、みぎ〜・・・とかけられる声が何とも言いがたい響きで、顕微鏡を挟んで先生の左目と私の右眼が真正面に見えます。かなり照れる距離感です。

眼科の先生は7〜8割が女性でした、診察を受けてたら女性が多いのもうなずけました。診察時瞼を指で上げられるのですが、そのタッチが女医さんと男性医では雲泥の差があります。指自体の感触も女性の方が柔らかくソフトに本当に瞼だけをそ〜〜と持ち上げてくれます。男性医だと指の感触自体が既にごつごつで、瞼だけを上げるという感じではなく、眼球に指を押し当てて瞼を上げるという感じです。女性の柔らかい指と、優しさは眼科医にぴったりだと思いました。

そんな感じで日々は流れ、明日退院という日を迎えました。その日は目の具合を聞かれ、痛みは術後一度もなかったのですが、目がごろごろするのと乾燥するのを伝えたところ、「じゃ、抜糸しますね。」と一言、何と眼を縫われていたようです、しかも3針も!

抜糸は手術室へ行くのかと思いきや、日々の診察が行われる部屋で、この場で抜糸するとのこと、消毒用の目薬がさされいつもの顕微鏡越しに覗かれます。多分医療用のピンセットで摘ままれたと思った瞬間「はい、ぬきま〜〜す。」と言うなり、ほんのちょっぴり白目が引っ張られる感触が来ました。2本目までは同じく痛みなし、三本目が鼻毛を抜いたような位の痛みを感じました、若干癒着していたようでした。

「はい、全部抜糸しましたよぉ」と言うとともに「後はピンクの涙が出るかも知れません」とにっこりと告げられました。ピンクの涙?と一瞬意味がわからず、診察室を出る頃に「あ、出血するって事か・・・」気づきました。翌日無事退院いたしましたが、ガスがまだ40%程残っています。

つづく

エントリーした画は3月17日に退院後初の撮影に行ったときのもの、もうツバメが舞っていました、ファインダーを覗くのは右眼ですからさほど影響はないのですが、遠近感が全くと言って良いほどちがいます!ジャスピンではありませんが雰囲気が良かったのでアップ。

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